宝石の内部に存在する特徴を、総じてインクルージョン(内包物)と呼びます。
実際のところ、宝石においてインクルージョンが皆無の石を見つけることは困難です。
しかし、「ダイアモンドにはフローレスというグレードがあるではないか」とお考えの方もおられるかと思います。
このフローレスというグレードの基準は、専門のグレーダー(鑑定士)が、グレーディングに適した環境下で、さらに健康状態が良好である場合に、20倍の拡大下でも一切のインクルージョンやブレミッシュ(石の表面<外部>特徴)を認めない、ということです。
仮に同じグレーダーが、高い拡大率の顕微鏡を使用して同じ石のグレーディングを行ったら、インクルージョンが発見される可能性は少なくありません。
宝石は、地中深くで生成される鉱物です。
各宝石の形成に必要な元素のみの純粋な環境を望むことができないことでもお分かりになるように、宝石にインクルージョンが存在することは、自然だと考えられます。
かといって、肉眼で見て、その宝石の美しさを明らかに損なっているようなインクルージョンがあれば、やはりそのような石は市場での価値が低くならざるを得ません。
カラーストーンの中には、その種に特有のインクルージョンを持つものがあり、場合によってはむしろそのインクルージョンを好んで選ばれる方もおられます。
しかし、それはそのインクルージョンが美しいと目に映るからであり、そうでなければやはり、肉眼で目立つインクルージョンはなるべく少ない方が好まれる傾向が大きいのです。
このように美的見地から見た場合以外に、より注意が必要な性質のインクルージョンがあります。
それは、石の耐久性に影響のあるインクルージョンです。
外部から与えられるショックにより割れや欠けを生じてしまったら、石の価値には大きなマイナスになります。
価値はどうであっても、自分の大切にしている宝石にそのようなことが起きたら、持ち主の精神的なショックは相当なものでしょう。
そのため、宝石のインクルージョンが、石の耐久性に影響を及ぼす程度のものであるか否かに注意することは大切です。
万全とは言えませんが、簡単な見分け方はあります。
インクルージョンが、石の表面に達しているかどうかを見極めることです。
表面にまで達しており、かつ大きいインクルージョンである場合、取り扱いには十分な注意が必要になります。
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